孝道教団 自殺対策で日韓会議 自死者追悼法要に関心 日本の11.5倍 行政の取り組み吸収
仏教タイムス2024年6月6日第3036号

上が韓国側参加者、下が日本側参加者 自死・自殺対策に関する日韓仏教徒会議が5月28日、横浜市神奈川区の孝道教団(岡野正純統理)で開かれた。韓国から韓国政府への政策提言を予定している韓国生命運動ユニオンのメンバー13人が参加。仏教、キリスト教、専門家らで、官民による対策によって自殺者数減少に転じた日本の取り組みを熱心に聞き入り、活発な質疑が行われた。
最初に岡野統理が挨拶。2017年に韓国訪問し自殺問題に触れ、秋には日本で国際シンポジウムを開いたことを回想し、「交流を通して学び合いたい」と話した。
韓国側は3氏が挨拶と発表を行った。圓仏教教務の金大禅氏が韓国の自殺予防対策の現状と課題を報告し、1995年に11.8人(10万人当たり)だった自殺率が、2009年に33.8人とピークを迎え、2020年では24.1人。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中では2003年から2022年まで1年を除いて19年間ワースト。加盟国平均の10.7人の2.4倍、日本の15.4人の1.5倍にあたると深刻さを吐露した。
日本側は、最初に行政担当者が発表。政府の自殺対策に携わり、現在は川崎市健康福祉局総合リハビリテーション推進センターの所長を務める竹島正氏は、1998年から14年続けて3万人を超え、2006年の自殺対策基本法制定、2019年の新法制定など網羅的に発表した。続いて、川崎市健康福祉局総合リハビリテーション推進センター企画連携推進課長の塚田和広氏が川崎市の取り組みについて、内閣府の孤独・孤立対策推進室参事官の松木秀彰氏が予防の観点から日本政府の取り組みを報告した。
質疑で韓国側は川崎市の対策に関する事業予算と内訳、条例による組織変化、対策に関する評価のあり方、ゲートキーパー(悩んでいる人に気づき声をかけられる人間)の育成法など実務的で具体的な質問を矢継ぎ早に提出した。
後半は日本の仏教者の取り組みについて。自死・自殺問題に向き合う僧侶の会の小川有閑氏(浄土宗)は自死遺族を招いての自死者追悼法要や自死念慮者との往復書簡などを発表。曹洞宗総合研究センターの宇野全智氏も追悼法要や法要後の茶話会などでハイリスク者にアプローチしていることを話した。
こちらにも具体的な質問が次々に寄せられた。手紙など僧侶たちは専門的な学びをどのようにしているのか、僧侶と遺族に倫理的な問題が生じていないか、必要な予算はどうしているのか、追悼法要に有効性を感じるが遺族だけなのかなど時間を超える質疑が続いた。若者の自殺問題が提起された際、韓国では今年7月から学校で生命尊重教育が実施されると報告した。
一行は日本滞在中、専門家と面会したほか京都自死・自殺相談センターにも足を運び、日本の対策の吸収に努めた。

